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「新・方法」第5号

寄稿と作品からなるEメール機関誌「新・方法」は今回で第5号になります。寄稿者は、美術家で美術評論やカオス*ラウンジの代表も務める黒瀬陽平さんです。

[寄稿]

We Are The Small World
黒瀬陽平(美術家、美術評論家、カオス*ラウンジ代表)

アニメソング(アニソン)とは、ご存知のように主として国内で生産されるアニメ作品で使用される歌曲、楽曲の総称である。アニメ・マンガ大国の日本においては、今やアニソンはアニメオタクの占有物ではなく、J−POPと同じような消費をされはじめている、といっても過言ではない。しかしながら、そういった現実とは無関係に、アニソン産業全体のイメージとして「J−POPの縮小再生産」といった印象は未だに根強く残っている。一方、J−POP産業はといえば、これもまたご存知のように、2000年代に突入してからの市場規模縮小は凄まじく、2007年にはついにシングルCDのミリオンセラーはゼロを記録した。

Animelo Summer Live(通称アニサマ)は、2005年から毎年開催されている国内最大のアニメソングライブイベントである。毎年、異なるレーベルに所属する多数の人気アニソン歌手が集結するという「フジロック」的なフォーマットは功を奏し、5回目の2009年には動員数5万人を記録している。

さて、このアニサマでは毎年オリジナルのテーマソングを作成しており、その年の出演者数人で編成された「アニサマフレンズ」いう名義で発表されているのであるが、そのPV(プロモーションヴィデオ)にはある明確な法則が存在している。

PVの舞台は毎回決まって、レコーディングスタジオである。参加している「アニサマフレンズ」が一人づつスタジオ入りし、マイクの前で割り振られた歌詞を歌い、収録してゆく様子が映される。そして最後には全員集合で、合唱パートを歌って終わり。毎年これである。このいわば「We Are The World」スタイルとでも言うべきPVが、アニサマの本質を表してると思うのである。

2000年代以降、消費者の趣向多様化が直撃したJ−POP業界では、もはや「We Are The World」的なコンテンツは成立しない。成熟しきった文化と市場は著しく細分化し、一曲のPVの中に各領域を代表するスターを配置する、という事自体が不可能になっている。

つまり、アニサマPVの「We Are The World」スタイルは、アニソン業界が「J−POPの縮小再生産」であるということを積極的に受け入れた結果、選択されたものなのである。飽和し、拡散しきった市場に再起動をかけるために、観測できる程度の小さな生態系(=アニソン業界)をセットしてみる。名作ゲーム「塊魂」においてスケールの拡大を体験するような楽しみが、そこにはある。

[新・方法主義者のウェブ作品]

  • 平間貴大

平面上の、ある点 O からの距離が等しい点の集合でできる曲線
http://hrmtkhr.web.fc2.com/new-method/005_j.html
平面とは、平らな面である
距離とは二点間を結ぶ直線の長さである
曲線とは、曲がった線である
円のことである

  • 馬場省吾

6種類の組み合わせによる4320回の多重意味付与
http://7x7whitebell.net/new-method/shogobaba/005_j.html
前号で私は著作権表示の組み合わせには制度上オリジナルの所在があり得ないことを示した。では単純な組み合わせによるオリジナルはどこにあるのか。そこで、HTMLはテキストに一定の意味を与える特性に着目する。つまり意味内容を解釈をすることなく、テキストに対する意味それ自体の付与がある程度可能となる。そして多重の意味付与の組み合わせによってオリジナルの所在を示すことが可能である。

ソースと実行第一八 - 二〇番
http://aloalo.co.jp/nakazawa/newmethod/b05/j.html
方法とは通常、目的を達成するための手段、すなわち「目的のための方法」のことである。しかし方法主義あるいは新・方法主義における方法は、それ自体が目的化された手段、すなわち「方法のための方法」だ。今回発表する三作では、「実行」においてクリックを繰り返すことにより、ちょっとした感覚的効果が得られる。しかしそれは目的ではない。「ソース」を読めば、HTML文書のために書かれたHTML文書であることが了解されよう。
[お知らせ]

[編集後記]

先日行われた鍋フリの新・方法鍋で、前号の本欄でご紹介した「模倣倣」も活躍しています。参考リンクから写真が見れるので、良かったらのぞいてみてください。(参考) http://togetter.com/li/95184 (皆藤)

発行人
平間貴大 @qwertyu1357
馬場省吾 @shogobaba
中ザワヒデキ @nakaZAWAHIDEKI

編集人
皆藤将 @kaido1900

機関誌「新・方法」第5号 日本語版
2011年2月4日発行