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「新・方法」第10号

寄稿と作品からなるEメール機関誌「新・方法」第10号をお届けします。寄稿者は、昨年「モダニズムのナード・コア」を編集、出版されたネットワーカーのばるぼらさんです。
[寄稿]

作品は作品ではない
ばるぼら(ネットワーカー)

電子音響家のオヴァル──2010年に久しぶりに新作を発表した──が、かつて「オヴァルプロセス」という作曲ソフトの公開を予告したことがある。これを使えば誰もがオヴァルのような音楽を作れるようになるという触れ込みで、結局配布はされないまま話は自然消滅してしまったが、もし実現していればアーティストという存在の意義を解体する野心的な試みになっていたかもしれない。

これに先駆ける試みは既にあった。90年代中期に立花ハジメが公開したアドビ・イラストレーター用プラグイン「信用ベータ」がそれだ。これは立花ハジメがデザインをする際に行う過程をパッケージングしてしまうことで、誰もが立花ハジメのような作品を作れる、もしくは誰もが立花ハジメがいなくても彼とコラボレーションができる、そういう本人不在の創作を提示した重要な作品だった(ただし、イラストレーターの現在のバージョンでは動かない)。

彼らが創作プロセスを公開することで問題提起したかったのは「コンピュータを使った創作ではアーティストとソフトウェアのどちらが重要なのか」という点だろう。この問いに対して、芸術は作者不在でも観察者のみで成り立つとしたのが赤瀬川原平トマソンだったが、プログラムによって行われる創作は出力結果でも過程でもなくプログラムのソースコード自体にある、と返答したのが中ザワヒデキではないだろうか。新・方法はこの視点から始まっているのだと思っている。

参考展示
エリック・レイモンド「ノウアスフィアの開墾」>「10 エゴの問題」
http://cruel.org/freeware/noosphere.html#10
アリスター・コーバーン「方法論の終焉」
http://blogs.itmedia.co.jp/hiranabe/2011/05/end-of-methodology-ja.html

[新・方法主義者のウェブ作品]

  • 平間貴大

無作品
http://hrmtkhr.web.fc2.com/new-method/010_j.html
「無作品作品」は、誰によっても制作されない。そしてその「無作品作品」にはタイトルが付けられる。ここで、一つの「無作品作品」には、一度だけ、創作の機会が与えられることになる。

  • 馬場省吾

昇順へのソート 第二番「シェーカーソート」
http://7x7whitebell.net/new-method/shogobaba/010_j.html
ある数字の列を一定の関係性になるように並べ替える方法は、コンピュータの世界では「ソート」と呼ばれ、様々なものがある。一つの課題に対してあらゆる方法によって解決がなされ得る場合に、それらの中から最適なものを選択するよりも網羅することに重点を置くことは、方法が目的ということである。今回は「シェーカーソート」による昇順の提示である。

ソースと実行第五六 - 五八番
http://aloalo.co.jp/nakazawa/newmethod/b10/j.html
HTMLで特定の文字列を上付きまたは下付き文字として表示するためのsup要素とsub要素は、物理タグの一種である。すなわち上向きまたは下向きのベクトルであると考えてよく、形態からのアプローチが可能である。今回発表する三作はそのやや感覚的な作例で、五七番では素数表が参照されている。ちなみに同じく上付きまたは下付き文字を使用した一四番から一七番までの四作では、フラクタル的な操作により形態が考察されていた。
[お知らせ]

[編集後記]

7月7日より20202にて開催される「鶯セヴーチ作品展」の関連イベント「セヴィーチェナイト」(7月9日)に平間さんと中ザワさんが出演します。よろしければ是非。ちなみに当日の料理担当は私です。詳細 http://www.shinrin20202.jp/ (皆藤)
発行人
平間貴大 @qwertyu1357
馬場省吾 @shogobaba
中ザワヒデキ @nakaZAWAHIDEKI
編集人
皆藤将 @kaido1900
機関誌「新・方法」第10号 日本語版
2011年7月4日発行