「新・方法」第11号

寄稿と作品からなるEメール機関誌「新・方法」第11号をお届けします。寄稿者は美術家であり、批評活動も行っている大山エンリコイサムさんです。


[寄稿]

メタ意識とリテラシー
大山エンリコイサム(美術家)

600字の文章というのは難しい。普通にかくと短すぎてなにも言えないので、600という字数制限それ自体を主題化する、つまりメタ視点を採用するわけだが、そもそもほとんど強制的にそうせざるをえないのだから、メタもなにもあったものじゃない。そして、メタにはいつもメタのメタがあるから、「メタもなにもあったものじゃない」という言い方もそのメタ・スパイラルの一部になってしまう。これを断ち切るのはなかなか大変だ。ところがツイッターなどを見ていると、いわゆる情報アーキテクチャがこのスパイラルを無効化しているようにも思える。140字という制限にひとたび慣れれば、もはやそれを短いとは感じず、最初は誰もが抱いたであろうメタ意識は少しずつ背景に退いてしまう。もともとメタ意識というのが、ある認識を規定する透明の条件そのものを前景化するとすれば、反対にツイッターでは、字数制限という条件がまず意識させられるため、むしろその透明化は事後的にやってくる。ではその時、なにが起こるのだろうか。情報環境に限らず今日の文化状況では、おそらくメタ意識に代わって、リテラシーに関する意識が重要性を帯びてきている。そしてそれは、単一の認識をその基礎条件へと溯るのではなく、複数の認識のギャップを渡り歩くためにこそ必要とされる。ここで詳察はできないが、現代文化について考える時、そのような推移は重要なポイントになるのではないだろうか。

(編集注)本誌では、毎号ゲストに字数600前後で寄稿を依頼しています。


[新・方法主義者のウェブ作品]

  • 平間貴大

無題
http://hrmtkhr.web.fc2.com/new-method/011_j.html
「無題」とは、タイトルが付けられていない作品の呼称である。一般的には意識的に芸術家によって選択された結果である。

  • 馬場省吾

昇順へのソート 第三番「コムソート」
http://7x7whitebell.net/new-method/shogobaba/011_j.html
「昇順へのソート」は方法である。方法は差異を生じさせない。本来的には、「昇順へのソート」は具象化され得ずとも作品としての強度を持つ。方法の具象は直感のためにある。

ソースと実行第五九 - 六五番
http://aloalo.co.jp/nakazawa/newmethod/b11/j.html
ウェブ頁が三つ与えられたとする。それぞれのウェブ頁には、他の二つの頁のどちらか片方、あるいは両方へのリンクが置かれるものとする。可能な三頁の組み合わせは七通りである。鑑賞者は三頁間の巡回を強制されたり、二頁間のトグルに陥ったり、来た道を戻るしかなかったり、どちらの頁にも常に行ける自由に恵まれていたりする。


[お知らせ]


[編集後記]

さて、本誌読者のみなさまには、平間貴大の無作品という文字はお馴染みのことと思いますが、その平間貴大の無作品作品展が、8月8日より9月3日まで20202にて開催されます。よろしければ足をお運びください。詳細 http://www.shinrin20202.jp/ (皆藤)

発行人
平間貴大 @qwertyu1357
馬場省吾 @shogobaba
中ザワヒデキ @nakaZAWAHIDEKI

編集人
皆藤将 @kaido1900

機関誌「新・方法」第11号 日本語版
2011年8月4日発行