「新・方法」第6号

寄稿と作品からなるEメール機関誌「新・方法」は今回で第6号になります。寄稿者は、音楽家で量子物理学者のマーク・サッドグロブさんです。

[寄稿]

ホームメイドについて
マーク・サッドグロブ(音楽家、量子物理学者)

ホームメイドとは何か:

自作楽器は誰にでも作れるものだ。たとえ演奏にさほど興味がない人でも、たとえばビスケット缶や机をトントンと叩くようにいつも何かを楽器にしている。さらにピエゾ素子(あるいは、その少し高価なお仲間のコンタクトマイク)とギタープラグをつなげば、こうした日常品を増幅された音響の発生装置にすることができる。

この「Do it yourself(自分でやる)」的な側面は、自作楽器の魅力のひとつであり、そこにDIY愛好家からストラディバリウスに至るまでの技術のスペクトラムがあることは疑いない。しかし僕にとって、自分だけの音響発生装置を作ることの本当の価値は、より洗練された考え方から生まれてくるものだ。ここで「私は自分に作れないものは、理解できない」という名高い物理学者リチャード・ファインマンの言葉が思い浮かぶ。逆にいえば、楽器を自作することで音のなりたちをよく理解できるようになるだろうし、その演奏を見る観客もまたその音が生まれるしくみをよりよく理解できるようになるだろう。

科学的方法:

さらには、楽器を作ることは、科学のある重要な側面を映し出すもうひとつの顔を持っている。あなたの頭の中にしかない概念を実現するには、あなたはそれを物理的な世界のものとして作り出さなければならない。このことは、厳密な意味での科学の外にいる人々にとっては、広く知られている科学的方法である「推測し、確認すること」に比べ、さほど重要な響きを持たないかもしれない。しかし科学の世界においては、「創造し、発見すること」というもうひとつの方法はより重要なものだと僕は考えている。つまり、新たに観測されることになる自然現象を可能にする独自の装置を作り、その現象を発見することだ。

楽器を作るということも、こうしたもうひとつの科学的方法にほぼそのまま従うのではないだろうか。楽器を構想し、創造し、それが作り出す音を発見すること―そしてその音は、大抵、あなたが思い浮かべていたものとはどこか異なっている。

[新・方法主義者のウェブ作品]

  • 平間貴大


http://hrmtkhr.web.fc2.com/new-method/006_j.html
鳥とは、鳥類の総称である。
鳥類とは、生物の分類区分の一つである。
脊椎動物門鳥綱に属する動物である。
卵生で、飛翔生活に適応した進化がみられる。

  • 馬場省吾

6種類の数字による4320個の順列生成
http://7x7whitebell.net/new-method/shogobaba/006_j.html
計算手順を実際に動作する形で具体化したものとして、プログラムには著作権が発生する。しかし出力内容にオリジナルが無い場合、オリジナルの本質はまさにプログラム自体に存在することになる。私はそのことを示すために、あえてHTML上で動作するプログラムコードを画像にした。最小限のオリジナルであるが故に、オリジナルの所在は明確である。

ソースと実行第二一 - 三六番
http://aloalo.co.jp/nakazawa/newmethod/b06/j.html
位相幾何学では量は顧慮されない。ユークリッド幾何学では量が顧慮される。表は本来位相的だが、その外観はユークリッド的だ。すなわち「ソース」においては同一の表であっても、記入量が異なれば、「実行」におけるその外観が変化する。今回私は、四種の異なる表と、四種の異なる記入量の組み合わせを提示した。ここに生じた外観上の差異が、快楽を惹起する。
[お知らせ]

新・方法 plays 方法ばばぬき / 新・方法 plays 新・方法ばばぬき

[編集後記]

初詣、豆まき、確定申告、と毎月着実に日本の行事をこなしていく新・方法が、最近愛らしく思えてきました。さて、来月は何をやってくれるのでしょうか? (皆藤)

発行人
平間貴大 @qwertyu1357
馬場省吾 @shogobaba
中ザワヒデキ @nakaZAWAHIDEKI

編集人
皆藤将 @kaido1900

機関誌「新・方法」第6号 日本語版
2011年3月4日発行